クジラの打ち上げは地震の前ぶれ?浜に打ち上がる理由と爆発の危険

海・魚・生き物

2026年9月、千葉県の九十九里浜に、体長およそ17mのナガスクジラが打ち上げられました。
そのあとも同じ海岸で2頭目のクジラが見つかり、ネットでは「地震の前ぶれでは?」と気にする声もあります。

大きなクジラが浜に横たわる姿を見ると、なにか悪いことが起きる前ぶれのように感じてしまいますよね。

この記事では、クジラの打ち上げと地震に関係はあるのかを、研究や専門機関の説明をもとに答えます。
クジラが浜に打ち上がる理由や、死んだクジラが「爆発」するといわれる理由、見つけたときにどうすればいいかもまとめました。

クジラの打ち上げと地震の関係は確認されていない

先に答えをいうと、クジラが打ち上げられたからといって地震が来る、という関係は、これまでの研究では確認されていません。

クジラやイルカが海岸に打ち上げられることを「ストランディング」といいます。

日本では、クジラやイルカの打ち上げは、分かっているものだけで年に300件ほどあるといわれています(FRIDAYデジタル)。

打ち上げは全国でふだんから起きていて、そのたびに大きな地震が来ているわけではありません。

くわしい根拠は、このあと順番に紹介しますね。

千葉・九十九里浜で何があった?

まずは、今回話題になったできごとを整理しておきます。

1頭目 2頭目
見つかった日 2026年9月19日 2026年9月30日
場所 千葉県匝瑳市の九十九里浜 同じ匝瑳市の海岸(1頭目から11日後)
種類・大きさ ナガスクジラ、体長約17m 報道では伝えられていない
状態 見つかったときには死んでいたとみられる 見つかった時点では生きていて、目撃した人によると「かなり弱っている感じで、潮を吹いていた」

1頭目は、台風の影響で海が荒れたため、しばらく浜に残されたままになりました。
千葉県は規制線を張り、「近づかないで」と呼びかけていました。その後、国立科学博物館による調査と解体が行われたと報じられています。

ナガスクジラは、シロナガスクジラに次いで大きくなるクジラです。
そんな大きなクジラが短いあいだに続けて見つかったことで、不安に感じた人が多かったのかもしれません。

「地震の前ぶれ」といわれるのはなぜ?研究ではどうなっている?

「クジラやイルカ、深海魚が浜に上がると地震が来る」という話は、昔から語られてきました。
地震の前に、動物がふだんとちがう行動をするのでは、という考え方です。

ただ、これを調べた研究では、関係は見つかっていません。

アメリカの海岸で、地震と打ち上げを照らし合わせた研究

イギリスの大学の研究チームは、アメリカ西海岸(ワシントン州・オレゴン州)で、2005〜2010年に打ち上げられた海の哺乳類と、沖合で起きた地震の記録を照らし合わせました(2018年発表)。

その結果、沖合の地震は、打ち上げの起きやすさにほとんど影響していないという結論になりました。
打ち上げは1つの原因ではなく、いくつもの理由が重なって起きると考えられています。

深海魚と地震の関係も「ほぼなし」

日本では、深海魚が見つかると地震の前ぶれといわれることもあります。
日本の研究チームが1928〜2011年の記録を調べたところ、深海魚が見つかってから1か月以内に、近く(半径100km以内)でマグニチュード6.0以上の地震が起きたのは1例だけでした(2019年発表。東海大学海洋研究所研究報告で紹介)。

研究者は、深海魚の出現は地震への備えには役に立たない情報だとしています。
深海魚の色のふしぎは、深海魚はなぜ赤い?深海で赤が「見えない色」になる理由と例外3つでも紹介しています。

能登半島地震の前後でも、打ち上げに変化はなかった

日本ファクトチェックセンターは、国立科学博物館の「海棲哺乳類ストランディングデータベース」を使って、能登半島地震(2024年1月1日)の前後をくらべました。
その結果、イルカやクジラの打ち上げの場所や件数に、地震との関係を示すようなちがいは見られなかったそうです。

気象庁も、動物は地震以外の理由でふだんとちがう行動をすることがあり、地震の前の「異常行動」は科学的に説明できていない、という立場です。地震への備えは、打ち上げのニュースがあってもなくても、ふだんから続けておくのがいちばんです。

クジラが浜に打ち上がる理由5つ

では、クジラはなぜ浜に打ち上がってしまうのでしょうか。
ニュージーランドの自然保護局などの説明をもとに、よくいわれる理由を5つにまとめました。

理由 どういうこと?
1. 病気・けが・弱っている 病気やけがで泳ぐ力が落ちたクジラが、浅いところへ流されてしまう。1頭だけの打ち上げや、母子での打ち上げに多い
2. 遠浅の海岸で深さを読みちがえる イルカやハクジラの仲間は、音のはね返りでまわりを知る(エコーロケーション)。ゆるやかに浅くなる砂浜や泥の海では、深さを読みちがえやすい
3. 群れのきずなが強い 群れで暮らすクジラは、弱った1頭について行ってしまい、集団で打ち上がることがある
4. 嵐・荒れた海 悪天候や荒れた海、にごった水で、方向がわからなくなる
5. 人間の活動 船とぶつかる、漁網にからまる。アカボウクジラの仲間では、軍の演習で使うソナー(音波)が集団の打ち上げにかかわったと考えられている例もある

ほかにも、エサを追いかけて浅いところに入りこんでしまう、シャチなどの天敵から逃げる、といった理由もあります。

ただ、実際には原因はひとつに決まらず、いくつもの理由が重なっていたり、調べてもわからなかったりすることが多いのが現状です。
だからこそ、国立科学博物館などの研究者は、打ち上げられたクジラを解剖して、病気や食べていたものを調べています。

今回の九十九里浜のクジラが打ち上げられた理由は、まだ分かっていません。
1頭目は見つかったときにはすでに死んでいたとみられ、死んだクジラが海流や風、波で岸に運ばれてくることもあります(集英社オンライン)。

死んだクジラはなぜ「爆発」するの?

今回のニュースでは、「爆発の危険性も」という言葉に驚いた人も多いと思います。

死んだクジラの体の中では、時間がたつと腐敗が進み、メタンなどのガスがたまっていきます。
ガスで体がパンパンにふくらみ、ごくまれに破裂することがあるんです。

2004年1月には台湾の台南市で、研究のためにトラックで運ばれていたマッコウクジラの体が、たまったガスで破裂し、血や内臓が近くの車や店にとび散ったことがありました(NBCニュース)。

日本鯨類研究所の研究者は、爆発のほかにも、次のような危険を挙げています。

  • 病原菌による感染症のおそれ
  • 波で大きな体が思わぬ方向に動き、押しつぶされるおそれ

死んだクジラはどう処理される?

打ち上げられたクジラをどうするかは、海岸を管理する自治体が決めます。おもな方法は次の4つです。

方法 内容
埋める(埋却) 浜や近くの土地に埋める。あとで骨格標本にできる
焼く(焼却) 解体して焼却施設で焼く。場所・人手・費用がかかる
海に沈める 船で沖まで運び、海の底に沈める
骨格標本にする 博物館などが引き取る場合に限られる

費用は数千万円かかることもあります。
2023年に大阪湾に迷いこんだマッコウクジラ「淀ちゃん」は、沖まで運んで沈めるのに約8,000万円かかりました。

クジラやイルカを見つけたらどうする?

海岸で打ち上げられたクジラやイルカを見つけたら、近づいたりさわったりせず、その海岸がある市町村や県の担当に連絡しましょう(水産庁)。
連絡するときは、見つけた場所や時間、体の大きさなど、分かる範囲で伝えると役に立ちます(高知県)。

見つけたときに気をつけること

  • 体にはさわらない(病原菌に感染しているおそれがある)
  • 近づかない(波で大きな体が動き、押しつぶされるおそれがある)
  • 規制線やロープが張られていたら、その中には入らない
  • 写真や動画をとるときも、離れた場所から

打ち上げられたクジラへの対応は、国のマニュアルにもとづいて、都道府県や市町村が中心になって行います。
海上保安庁や警察、水族館や研究機関などが協力することもあります。
めずらしい光景ですが、専門の人にまかせて、遠くから見守るのがいちばんです。

子どもとニュースを見ていて「なんでクジラが打ち上がるの?」と聞かれたら、「病気で弱ったり、浅い海で迷ったりしちゃうんだって。地震の前ぶれだっていう証拠はないんだよ」と答えてあげてくださいね。

まとめ

  • クジラの打ち上げと地震の関係は、これまでの研究では確認されていない。日本ではクジラやイルカの打ち上げが年に300件ほどあるといわれる
  • 2026年9月、千葉・九十九里浜(匝瑳市)で、19日に体長約17mのナガスクジラ、30日に2頭目のクジラが見つかった
  • 打ち上がる理由は、病気・けが、遠浅の海岸での読みちがい、群れのきずな、嵐、人間の活動など。いくつもの理由が重なることが多い
  • 死んだクジラは体の中に腐敗ガスがたまり、ごくまれに破裂することがある。感染症の心配もある
  • 見つけたら近づかず、さわらず、市町村や県の担当に連絡を

参考:日本テレビ「巨大クジラが千葉に漂着 “爆発”の危険性も」(ライブドアニュース、2026年9月22日放送『news zero』より)/集英社オンライン「千葉・匝瑳にまた2頭目の巨大クジラ」(2026年9月30日)/FRIDAYデジタル「漂着した17m巨大ナガスクジラ」/Grant ほか「Offshore Earthquakes Do Not Influence Marine Mammal Stranding Risk on the Washington and Oregon Coasts」(Animals、2018年)/織原義明「ボラの大量死と地震との関連性の検討」(東海大学海洋研究所研究報告、2022年。深海魚の研究を紹介)/日本ファクトチェックセンター「イワシやクジラの漂着は地震の影響?」/ニュージーランド自然保護局「Why do marine mammals strand?」/東洋経済オンライン「海獣学者・田島木綿子さんインタビュー」(2021年)/NBC News「Thar she blows! Dead whale explodes」(2004年)/Whale and Dolphin Conservation「Why do marine mammals strand?」/DOSITS「Strandings」/水産庁「鯨類の座礁・混獲」/高知県「座礁した鯨類の取扱いについて」/大阪港湾局「鯨類対処マニュアル」(2024年)/神奈川県立生命の星・地球博物館「自然科学のとびら」第12巻3号(2006年)

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