深海にすむオオグソクムシは、何年も食べなくても平気なことで知られる生き物です。
横浜・八景島シーパラダイスでは、2026年10月22日(木)から、このオオグソクムシが500匹も集まる特別展示が始まります。
「どうしてそんなに食べなくても生きていられるの?」「おなかはすかないの?」と、子どもに聞かれて答えに困った人もいるのではないでしょうか。
この記事では、海や生き物にくわしいカエルが、オオグソクムシが食べなくても平気な理由を、最新の研究をもとにわかりやすく説明します。鳥羽水族館で5年以上食べなかった仲間の話や、八景島の展示の見どころもまとめました。
オオグソクムシはなぜ何年も食べなくても平気?先に答えると
理由は大きく2つあります。
- 大きな胃:体のおよそ3分の2をしめる胃に、食べものをたっぷりためておける
- 省エネの体:冷たい深海で、生きるのに使うエネルギーをぎりぎりまで少なくしている
つまり、食べられるときに一気に食べてためこみ、そのたくわえを少しずつ、長い時間をかけて使っているのです。
深海は、エサになるものがめったに落ちてこない場所です。いつ来るかわからない「ごちそう」に合わせて、体のしくみが「食いだめ」と「節約」に向いていると考えられています。
オオグソクムシとは?ダイオウグソクムシとのちがい
オオグソクムシは、エビやカニと同じ甲殻類のなかまです。グソクムシのなかまは、ダンゴムシやフナムシと同じ「等脚目(とうきゃくもく)」に入ります。
海の底に沈んできた大きな生き物の死がいなどに集まって食べることから、「深海の掃除屋」とも呼ばれています。八景島シーパラダイスの説明では、こうして食べつくすことで海底の環境が保たれ、栄養が海にめぐっていく、大切な役目をしているとされています。
よく話題になる「ダイオウグソクムシ」は、同じグソクムシのなかまの、大型の種類です。
| くらべるところ | オオグソクムシ | ダイオウグソクムシ |
|---|---|---|
| 大きさ | 体長10cmほど。長崎大学の調査では2.9〜12.9cm | 成長すると体長約45cm |
| すんでいる海 | 北西太平洋。日本の周りの海にもいる | メキシコ湾や西大西洋など。日本の海にはいない |
| 深さ | 東シナ海の調査では、水深400〜500mでいちばん多くとれた | 水深200〜1,000mほど |
日本の近くの海で見られるのは、こちらのオオグソクムシです。

オオグソクムシは、まるでロボットのようなフォルムです。水族館で見かけたら、かっこいい眼にもぜひ注目してみてください。そして、なぜか子どもに人気があります(笑)。
オオグソクムシの寿命は?
オオグソクムシが野生で何年生きるのかは、はっきりした数字が見つかりませんでした(2026年10月時点)。大型のなかまのダイオウグソクムシも、野生での寿命はよくわかっていないとされています。深い海の底にすむため、くらしを直接観察するのがむずかしく、まだわかっていないことが多い生き物です。
飼育の例では、次に紹介する鳥羽水族館のダイオウグソクムシ「No.1」が、6年158日のあいだ飼育されていました。
鳥羽水族館のダイオウグソクムシは5年以上食べなかった
「グソクムシは食べない」で特に話題になったのが、三重県の鳥羽水族館で飼育されていたダイオウグソクムシ「No.1」です。
| できごと | 内容 |
|---|---|
| 最後の食事 | 2009年1月、アジを1匹食べたのを最後に、何も食べなくなった |
| 体重 | 入館したときは1,040g。3年10か月食べなかったあとの測定でも、12gしか減っていなかった |
| 死んだ日 | 2014年2月14日。飼育日数は6年158日、食べなかった日数は5年43日 |
3年以上食べなくても、体重がほとんど変わらなかったのがおどろきです。なぜ死んだのか、くわしい原因はわかっていません。
同じ水族館では、入館してから4か月なにも食べていなかった別のダイオウグソクムシ(No.9)の消化管に、消化されていない魚の肉のようなエサが160gほど残っていたことも、飼育員さんが紹介しています。食べたものを長いあいだ体の中にためておけることが、ここからも見えてきます。
理由1:体の3分の2もある大きな胃に「食いだめ」できる
2026年6月、中国科学院海洋研究所の研究チームが、オオグソクムシとタイワンダイオウグソクムシ(水深約900mにすむ種類)を調べた結果を、学術誌『Cell』に発表しました。
この研究によると、深海のグソクムシの胃は体のおよそ3分の2をしめていて、浅い海や海辺にすむなかまよりずっと大きいことがわかりました。
- 胃がいっぱいのときは、細かくすりつぶされ、よく消化が進んだ泥のような中身になっていた
- その中には、脂肪をためることにかかわる細菌のなかま(クラミジア門)が多かった
研究チームは、エサにありつけたときに大量に食べ、そのあとは体のエネルギー消費をぐっと下げて、ためたものを長もちさせているのではないか、と考えています。
長崎大学の研究(2023年)でも、オオグソクムシは最大で体重の45%ものエサを1度に食べられる「大食い」だとわかっています。めったにないチャンスで、一気にたくさん食べられる体なのです。
理由2:冷たい深海でエネルギーをほとんど使わない
たくさん食べてためても、エネルギーをどんどん使えば、たくわえはすぐになくなってしまいます。オオグソクムシのもう1つのひみつは、エネルギーの使い方が「超省エネ」なことです。
1回の食事で約6年分?長崎大学の計算
長崎大学のグループは、オオグソクムシが使う酸素の量から、生きるのに必要なエネルギーを調べました。
- 水温が10℃上がると、使うエネルギーは2.4倍に増える(反対に、冷たいほど使うエネルギーが少ない)
- 水温10.5℃のとき、体重33gのオオグソクムシが1年に使うエネルギーは約13kcal
- 体重の45%の量のクジラの脂身を食べたとすると、じっとしているときの約6年分のエネルギーになるという計算
ただし、これは単純な計算です。実際には消化や成長、エサ探しなどにもエネルギーを使うので、「6年間食べずに生きられる」という意味ではない、と大学も説明しています。
細菌からもらった遺伝子が「省エネのスイッチ」?
先ほどの『Cell』の研究では、もう1つおもしろいことがわかりました。
深海のグソクムシは、体の中にいた細菌からND1という遺伝子を取りこみ、自分の遺伝子として持っていたのです。この遺伝子は、体の中でエネルギーをつくるしくみにかかわっています。
研究チームがこの遺伝子をゼブラフィッシュ(小さな魚)などに入れて調べたところ、ふつうの温度ではエネルギーを使う速さが上がって、かえって空腹に弱くなりました。ところが、深海のような低い温度では、反対にエネルギーの使い方がおさえられ、ゼブラフィッシュの空腹に耐える力は37%高まりました。
冷たい深海で、この遺伝子が省エネのスイッチのような役目をしているのではないか、と考えられています。
大きな体をたもつにはエネルギーがいるのに、深海にはエサが少ない。この「矛盾」を、「たくさんためる胃」と「使うエネルギーをぎりぎりまで減らす体」の組み合わせで乗りこえている、というのが研究チームの説明です。
八景島シーパラダイスで500匹のオオグソクムシを見るには
八景島シーパラダイスでは、ハロウィンの特別展示「ゾクゾクッ!グソグソパニック」として、オオグソクムシ500匹を集めた水槽が登場します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 2026年10月22日(木)〜10月31日(土) |
| 場所 | アクアミュージアム3F LABO7「未知なる海底谷 深海リウム」 |
| 時間 | アクアミュージアムの営業時間と同じ |
| 展示のようす | 水槽の壁や上に網をはりめぐらせ、500匹がエサに群がる様子を立体的に見せる |
| 苦手な人へ | 水槽全体がカーテンでおおわれていて、めくると見える |
展示が見られるのは、10月22日(木)〜31日(土)の10日間だけです。
網の上をゆっくり動く姿や、重なり合うように集まる姿、ときにはあお向けで泳ぐ姿も見られるかもしれない、と紹介されています。食べないことで有名な生き物ですが、エサに群がる様子を再現した展示なので、「掃除屋」としての一面をイメージしやすそうです。
展示のための追加料金は、公式の案内には書かれていません。入場に必要なチケットや料金、回り方は八景島シーパラダイス子連れの回り方は?コツ3つと年パス活用にまとめています。最新の情報は公式サイトで確かめてから出かけてくださいね。
オオグソクムシは食べられる?「姿揚げ」も販売
「オオグソクムシは食べられるの?」と気になる人もいるかもしれません。展示にあわせて、水族館「うみファーム」で「オオグソクムシ 姿揚げ」(1匹990円)が売られます。
仕入れの状況によっては、販売が一時中止になったり、内容が変わったりすることがあるそうです。

じつは、ダイオウグソクムシを食べたことがあります。体が大きいわりに食べられるところが少ないので、高級食材です。味はエビやカニに近い感じでした。好き好んで食べるほどではありませんが、話のネタにはなりますよ。
子どもに聞かれたら?30秒で話せる答え
水族館で「なんで食べなくても平気なの?」と聞かれたら、こんなふうに話してみてください。
- 深い海の底には、ごはんがめったに落ちてこないんだって
- だから、ごはんを見つけたら、おなかいっぱい食べてためておくんだよ。胃が体の3分の2もあるんだって
- それに、冷たい海でじっとして、エネルギーをほとんど使わないようにしているんだよ
深い海の生き物の「なぜ?」は、深海魚はなぜ赤い?深海で赤が「見えない色」になる理由と例外3つでも紹介しています。水族館の深海コーナーに行く前に読んでおくと、親子の話がもっと広がりますよ。
まとめ:オオグソクムシは「食いだめ」と「省エネ」で何年も食べずにいられる
- オオグソクムシは、体のおよそ3分の2をしめる大きな胃に、食べものをためておける
- 1度に最大で体重の45%ものエサを食べられる。じっとしているときの約6年分のエネルギーになる、という計算もある(実際に6年生きられるという意味ではない)
- 冷たい深海では、使うエネルギーがとても少ない。細菌からもらったND1という遺伝子が、省エネにかかわっている可能性がある
- 鳥羽水族館のダイオウグソクムシ「No.1」は、食べなかった日数が5年43日。体重もほとんど減らなかった
- 八景島シーパラダイスでは、2026年10月22日(木)〜31日(土)に500匹のオオグソクムシの特別展示がある
参考
- 横浜・八景島シーパラダイス「ゾクゾクッ!グソグソパニック」
- 株式会社 横浜八景島のプレスリリース(PR TIMES、2026年10月16日)
- 長崎大学「1度の食事で6年分のエネルギーを獲得!? 深海生物オオグソクムシの代謝応答を解明」(2023年3月17日、PDF)
- EurekAlert!「Researchers reveal how supergiant deep-sea isopods survive years without food」(中国科学院、2026年6月5日、英語)
- カラパイア「オオグソクムシが何年も絶食できる理由が判明。巨大な胃と代謝を抑える体の仕組みにあった」(2026年6月7日)
- マイナビニュース TECH+「長崎大、オオグソクムシの東シナ海生息北限域での分布実態を解明」(2026年5月13日)
- ねとらぼ「日めくりダイオウグソクムシ『今日のグソク』」(鳥羽水族館の飼育員さんのコメント、2014年)
- るるぶKids「ダイオウグソクムシとは?会える水族館やふしぎな生態、キモかわいいグッズを徹底解説!」
- imidas「ダイオウグソクムシ」
- 文春オンライン『オオグソクムシの本』(森山徹 著)の紹介


