水族館の深海コーナーをのぞくと、キンメダイやタカアシガニなど、まっ赤な生き物がたくさんいますよね。
「暗い海の底なのに、どうしてこんなに目立つ色なの?」と、ふしぎに思ったことはありませんか?
実はこの赤、深海ではいちばん目立たない色なんです。
この記事では、深海魚が赤い理由を、海の中で光がどう消えていくかから順番に説明します。
赤くない深海魚の話や、2026年9月に沖縄美ら海水族館で世界初展示が始まった紅白の魚「コウハクカザリアカボウ」の話も紹介しますね。

子どもに「なんで赤い魚が多いの?」と聞かれたことがあります。
「海の深いところでは、赤は黒っぽく見えるんだよ」と教えたら、「へぇー!」と感心していたのを覚えています。
深海魚が赤いのは「深海では赤が見えない色」だから
先に答えをいうと、深海には赤い光がほとんど届かないので、赤い体は黒っぽく見えて目立たなくなるからです。
わたしたちが「赤い」と感じるのは、赤い光が当たって、それがはね返って目に入るときだけ。
赤い光そのものがない場所では、赤い体は色を失って、まわりの暗さにまぎれてしまいます。
つまり深海魚の赤は、目立つための色ではなく、かくれるための色。
天敵に見つかりにくく、獲物にも気づかれずに近づけるので、深海では都合のいい色だと考えられています。
海の中では、赤い光から先に消えていく
太陽の光には、赤・黄・緑・青など、いろいろな色の光がまざっています。
ところが水は、赤や黄色の光を吸収しやすく、青や緑の光は吸収しにくい性質があります。
そのため、海にもぐるほど赤い光から先に消えていき、数十〜数百メートルの深さでは、届く光はほぼ青い光だけになります。
| 水深 | 光のようす |
|---|---|
| 浅い海 | 太陽の光のいろいろな色が届く |
| 70mほど | 届く光は地上の約0.1%ほど |
| 数十〜数百m | 赤い光が吸収され、青い光が中心になる |
| 200m〜 | 「深海」と呼ばれる深さ。200〜400mでは人の目ではわからないほど暗い |
ちなみに、水深200mより深い「深海」は、世界の海の約98%をしめるといわれています。
海のほとんどは、赤い光が届かない世界なんですね。

深場にすむハナダイの仲間は、ライトを当てると、あざやかでとてもきれいな色をしています。
その色に魅了される人も多く、ダイバーに人気の魚です。
赤い魚は、深海では「黒」に見える
では、青い光しかない場所で赤い体はどう見えるのでしょうか。
赤いものは、赤い光をはね返して、それ以外の色の光を吸収します。
青い光だけが当たると、はね返す光がほとんどないので、赤い体は黒っぽく見えて、暗い海にとけこんでしまいます。
赤い深海の生き物には、たとえばこんな仲間がいます。
| 生き物 | ひとこと |
|---|---|
| キンメダイ | 大きな目とまっ赤な体。煮つけでおなじみ |
| キンキ(キチジ) | 赤くて細長い体。北海道ではキンキの名で流通する高級魚 |
| ノドグロ(アカムツ) | 背中が赤い魚。口の奥ののどが黒いのが名前の由来 |
| タカアシガニ | 大きなオスがはさみ脚を広げると3.8mに達することもある、巨大なカニ |
| メンダコ | 水深200〜1000mにすむ平たいタコ。耳のように見えるヒレで向きを変える |
水揚げされたり水族館の明るい照明の下にいたりすると、赤がとても目立ちます。
でもそれは、深海にはない「太陽や照明の光」が当たっているから。ふるさとの深海では、ほとんど見えない色なんです。
赤くない深海魚もいる!例外3つ
深海魚がみんな赤いわけではありません。黒・灰色・こげ茶の魚も多くいます。
「赤以外」の深海魚を3つのタイプに分けてみました。
例外1:黒や灰色の魚
光がまったくない深さでは、黒も赤と同じように見えなくなります。
深海魚には黒・灰色・褐色の仲間が多く、こちらも暗さにまぎれる色です。
例外2:銀色・透明・青い魚
銀色のアオメエソ、体が透きとおったデメニギス、青いヨコヅナイワシなど、深海にはほかの色の魚もいます。
同じ深海でも、すむ深さや暮らし方によって、いろいろな色の魚がいるんですね。
例外3:赤い光を出して、赤い光を見る魚
多くの深海魚は、赤い光を感じとることができません。
ところがオオクチホシエソという魚は、例外的に赤い光を感じとることができ、目の下に赤く光る「ヘッドライト」のような発光器を持っています。
ほかの魚に気づかれない赤い光で、まわりを照らせるというわけです。
「赤は見えない色」という深海のルールを、うまく利用している魚ですね。
深海魚が光るのは、獲物をおびき寄せるためや、おなかを光らせて下から見たときの影を消し、身をかくすため(カウンターイルミネーション)などと考えられています。
紅白の新種「コウハクカザリアカボウ」が世界初展示
深い海の魚の色で、いま話題になっているのが、沖縄美ら海水族館の「コウハクカザリアカボウ」です。
| 名前 | コウハクカザリアカボウ(学名:Decodon erythroleukos) |
|---|---|
| なかま | ベラ科(カザリアカボウ属) |
| 採集 | 2026年7月、久米島沖の水深130m |
| 展示 | 2026年9月15日から、沖縄美ら海水族館の「深海の小さな生き物」コーナー |
| ここがすごい | 2025年に新種として発表されたばかり。カザリアカボウ属では約50年ぶりの新種で、これまで世界で3個体の標本しか知られていなかった。生きたまま飼育・展示するのは世界で初めて |
名前の「コウハク」のとおり、尾ビレのあざやかな紅白の模様が特徴です。
学名の「erythroleukos」も、ギリシャ語の「赤」と「白」に由来しています。近い仲間とくらべて、尾ビレの赤い部分が広いのが見分けるポイントだそうです。
ふつう「深海」は水深200mより深いところをいいます。コウハクカザリアカボウがとれた水深130mは、深海より少し浅い「深場」ですが、すでに赤い光はかなり弱くなっている深さです。
赤い光が届きにくい深さで、こんなにあざやかな紅白の模様を持っている。
深い海の魚の色には、まだまだわかっていないおもしろさがありそうです。
子どもに聞かれたら?30秒で話せる答え
水族館で「なんで赤いの?」と聞かれたら、こんなふうに話してみてください。
- 海の水は、赤い光から先に吸いこんじゃうんだって
- だから深い海には、赤い光がとどかないんだ
- 赤い光がないと、赤い魚は黒っぽく見えて、敵に見つかりにくいんだよ
水族館の深海コーナーで、「深海だとこの魚は黒く見えるんだよ」と話すと、いつもの水槽が少しちがって見えるかもしれません。

子どもの「なぜ?」に答えると、羨望のまなざしで見られて、パパへの信頼がアップします(笑)。
水族館の深海コーナーで、ぜひ試してみてください。
まとめ
- 深海魚が赤いのは、深海には赤い光がほとんど届かず、赤い体が黒っぽく見えて目立たないから
- 水は赤や黄色の光を吸収しやすく、海の深いところに届くのはほぼ青い光だけ
- 深海魚には黒・灰色・銀色・透明・青い魚もいる。オオクチホシエソは赤い光を出して、赤い光を見ることができる
- 紅白の新種「コウハクカザリアカボウ」は、2026年9月15日から沖縄美ら海水族館で世界初展示中
参考:沖縄美ら海水族館「世界初展示!コウハクカザリアカボウ」(PR TIMES、2026年9月15日)/サカナト(2026年9月28日)/新潟県立自然科学館「赤は派手な色?地味な色!?」/キヤノン サイエンスラボ・キッズ「深海生物ってどんな色?」/戸田観光協会「深海魚の聖地 HEDA」/サカナト「海で発光する魚たち」/東京大学「どうして深海魚は光を放つの?」

